みなさまこんにちわ。

さて、12月17日(日)の15:30~17:30に開催した地域自然情報研究会の報告です。
今回は、一社)埼玉を食べる 代表理事 であり、 エバーグリーン・プランニング 代表。
さらにGCNの会員でもある、安部 邦昭 氏から、話題を提供して頂きました。

お題は、
『塚本郷~Re農vationプロジェクト 1200年田んぼを未来へつなぐには?』

埼玉の中心地のほど近くにある塚本郷のお話。
鳥好き界隈では、「大久保農耕地」と呼ばれ、モニタリングサイト1000にもなっている場所。
荒川の堤外地で、田んぼの大きさがバラバラで不定形なの、昔ながらの農地。しかも、かけ流し。
いわば『平地の棚田』っていう感じです。
都心から車で30分、大宮やさいたま新都心から自転車で20分ぐらいなんですが、街中からは見えないし、あまり認識もされていないような場所だそうです。

埼玉の中心地が後ろに見えます

この場所の特徴ですが。
1.少なくとも1200年以上続く田んぼ
→奈良時代の条理遺構が確認されている地域で、それ以降、農の営みが連綿と続いてきた
2.大河川の本川とつながった田んぼ
→メダカをはじめ、ナマズやフナなども川から上がってくる
3.圃場整備が未実施
→田んぼの大きさや形が、ヒューマンスケールで、用排水路が深くなくて、いつもジメジメした排水が悪い場所
4.貴重な生きものがたくさん生息している
→ノウルシをはじめとする湿性植物、樹林と水田が連続的に存在する環境に生息するニホンアカガエルとか、十年前まではホタルもいたような、生きもの屋には有名な場所

生きもの屋から見れば、これって埋土種子の宝庫では?とか、とにかくいい所なんだとだとわかります。

かな~り不定型な田んぼ

一方でこんな場所だからの課題も多く。
1.田んぼが儲からない
→圃場整備をしていないので効率的な農業は無理だし、米価が下がっている
2.若い後継者がいない
→儲からないから若者が現れないし、相続してもやらないしやれない
3.荒れていく環境
→田んぼは休耕田からヨシ原に、水塚は竹藪に、屋敷林や雑木林も手入れできない
4.侵入・繁殖する外来種
→ジャンボタニシが大繁殖し、侵略的外来種のオオカワヂシャが侵入
5.廃れていく生活文化
→住人がいなくなり薬師堂が廃堂になるなど生活文化の継承が厳しい

里地里山では方々で聞く課題です。
でも、何とかしなくちゃ、こんないいところなのになくなってしまいます。
それで安部さんが「何とかしなくちゃ」と思い、始めたのが、
『Re農vationプロジェクト』

ロゴがカッコイイ!

今までは、米という「モノ」を生産・販売することだけが収益源だったのを、
Re農vationでは、地域の多様な魅力を基に、農業や文化、土地の魅力を楽しむ「コト」を創造し、新たな収益源として確立し、農地を中心とした環境の継承を図ることを基本的な方針としているそうです。
具体的は、田んぼや竹細工づくりなどの「体験」や、竹藪を切り開いたりホタル復活、メダカ水路づくりなど「魅力価値の向上」などが行われているそう。

さて。
このようなことを進めるには、地元生産者の中に入っていくことがどうしても必要ななるのですが、安部さんはどうしたか?
「草刈りを手伝う」だそう。これをやられていやな生産者は絶対にいないらしい。
ココの場合、近所の大学の学生さんやボランティアなど、人手があるというのが、ちょうど良かったようです。
また、申請書を書いたりを含めた書類整理なども大変喜ばれるそうです。

今は、観察会などのイベントをやったり、竹藪を上手く使おうという活動や、プチマルシェを開いたり、お正月飾りを作ったり。
とにかく楽しそう!

あと、荒川の話。
治水の考え方として。
普通の川は、水を早く流すため、だんだん川が太くなっていくのですが、荒川の場合はそうじゃない。
下流が既に市街化して水路を太くできなかったから、放水路を作ったり、中流域を太くした。
普通は水を早く流したいから河川に支障物を置く事はないのですが、荒川の場合は河川が太い中流域で水の流下を遅らせたいから、ここにあるような「横堤」があるみたいです。

川が太い!

参加者からは、
土地所有はどうなってる?
他の場所と連携した活動をしてみるのもいいのでは?
といった意見などが飛び交っていました。

今後は、生きもの情報を積み上げたり、30by30の登録サイトにしたりといったことを考えているそうで、GCNとしても、協力できればと考えています。

なお、今回のパンフレットなどはこちらです。
>>詳細はこちら

さて、今回の研究会は、新宿エコギャラリーという現地会場と、zoomのオンライン会場のハイブリッド形式で行いました。
現地会場は9名、zoom会場は6名で、計15名の参加でした。

会場の様子
zoomの参加者も多かったです

今回は、3度目のハイブリッド開催。配信方法も前回と同じだったのですが、慣れてきたなぁと思いながらもやはり少し遅れてのスタート。中々難しいものです。

安部さん、ご参加頂いた皆さま、ありがとうございました。

文責:梶並